反日常系

日常派

日記

いつも眠りは浅く、二三時間おきに起きる。よくない夢も押し売られて体力が奪われていく。時折夢と現実の区別がつかないことがあり、記憶の中にないことは夢だと区別しているが、何回も見た夢だと上手く区別ができなくて困ってしまう。 夢の中では僕は死んだ…

日記

老婆が、一人だけ重力に配慮されているかのようなスローモーションでゆっくりと倒れてきた。駅の上りエスカレーターでのことだった。 老婆は杖をよたよたとつきながら、逆Uの字に見えるくらいの姿勢で、エスカレーターに乗るのも三段くらい様子を見て、えい…

日記

アルコールで眠くなり、コーヒーで眠くなくなる。その中間を行き来しながら、ただ、ぼんやりと思いつく物事に嫌な出来事が思い浮かばないように気をつける。酒を飲めば直近のことは忘れるくせにずっとあるものごとは消えない。死にたいとうわ言のように言う…

日記

今日は寒く、天候の話をする度に、太宰治が「昔の文学者のサロンでは天候の話しかすることがない者のことを天候居士と読んだ」というような内容を書いていたのを思い出す。もう十月も終わりかけ、その暦に則ればそれらしき天候なのだが、毎回そう思いながら…

日記

友人と酒を飲んだ。毎日のように──と言うと毎日ではないがほとんど毎日という風に取られるだろう。毎日である──酒を一リットルから飲み、前後不覚になったふりをして憂鬱をやりすごしている。なので、寂しく酒を飲むならせめて友人と酒を飲む方が些か健康で…

日記と夢の話

誕生日を迎え、二十七にもなった。もう十字路の悪魔にすら魂を売りとばすことが出来ない年齢になり、この一年は「あと何日でカート・コバーン」「あと何日でジャニス・ジョプリン」「僕は一体大庭葉蔵のように生きれたかね」と思いながら生きていくのだろう…

日記

文章なんて、鼻くそをほじりながらでも、涙と足の裏で書くのでも、結局は見られん限り同じだと思っていたら一ヶ月以上書かないでいられた。文章を書きたいと思う気持ちはなくもないが、日々があまりにも怠けるのに忙しすぎたため、まとまった文章を書くにも…

日記

身体から死臭でも漂っているのか、単に部屋を清潔に保とうと思う気力がないためか、無数の小バエが部屋、そして身体の周りを飛び回っている。小バエ捕りを設置するものの、小バエは減ってはいるが消えてはいない。湯を沸かしてコーヒーをマグカップに注ぐ。…

日記

クーラーからは埃や黴など体に良くない物質を延々顔に吹き付けられているのだろうと思い、夏の暑さがもう会うことはないと予期させる人のようにしおらしく、最後の印象だけは良いものにしようと顔を歪めて優しくなったのを境に、今更と思いながらも扇風機の…

日記

朝起きると、時間が無限に引き伸ばされるような感覚に陥った。日射しはチリチリと光速で尾を引いて、枕元にようやく到達する。夜中は定期的に起きる。起きたのだからと冷蔵庫の明かりを手がかりに煙草に火を付ける。煙草は定期的に吸いたくなるが今は美味い…

日記

夏が来ただとか七月になっただとか、その癖気温が思ったよりもやさしくて救われたような気持ちになるだとか、些事の中で回遊する魚のように、簡単に頭の中に浮かぶ感想以下の意識の流れに、そうわかっていながら抗いようもなく流されている。感想以下の箇条…

病院に行った日の日記

病院の待合室で、あまりにも小さい呼び出しの声に苛立ちながら、さしてすることもないためにこの文章を書いている。病人と老人は声が大きく、老人が声を大きくしているのはお互いの耳が遠いからだと直ぐに理解出来るものの、病人(のほとんど)は何故声だけ…

日記

摂取しすぎて毒にも薬にもならない音楽を、何を言っているのかを査収することもなく聴いている。近頃は何をする気力もなく、それを伝えると医師は我が意を得たりと言いたげな表情で「夏バテですよ」とでも宣うだろう。少し前なら梅雨、更に前なら五月病、も…

糞尿にて思案したること

酒をジュースのように飲み、日々に打つ句読点のように珈琲を飲み、行間のように煙草を喫んでいる。酩酊の定義が間違っているのか、身体か脳のどちらかが酒に強すぎる(弱すぎる)のか──そしてその推測のどちらも当てはまっているのだろう──によって酩酊が口…

日記というより意識の説明

六月になった。定期的にやるこの報道じみた──それにしては言葉を忘れたみたいな──書き出しをやめようと思うのだが、時間が経ったことくらいしか興味を引くものがない。ただ時間が経つのに任せる。その時折の感情も頓服薬の眠気と綯い交ぜにして、ぼんやりし…

日記

金もなくなり、そのくせに新しいエフェクターを購入し、変な音が出たら喜んでいる。生活能力(と生存のための思考力)が著しく欠如しているために生活をどうにか福祉でようやく生き延びているが、生活能力が欠如していなかったらもう少し簡単に生き延びてい…

日記

酩酊の手段をなくして、仕方なく残りのレキソタンを安定するためにちびちび飲んでいる。存在、存在が存在するために必要とする時間。時間が僕には我慢ならない。生きている、息を吸って吐いている、秒針が六度ずつ動く。全てが僕にとっては我慢ならない。僕…

酩酊すら遠ざかって、僕は誰か虚構を愛する

二箇所通ってる精神科医から、口八丁で薬をせしめたが、どちらも効くようなものではなかった。ベンゾジアゼピンを信用しすぎていたのか、酒と一緒に飲んだレキソタンもブロチゾラムも、酩酊に適うような代物ではなく、ただ下腹部がふつふつとして気分の悪さ…

酩酊を待つ間に

酩酊を待っている。薬は二箇所通っている精神科からせしめた物で、名前をなんと言ったか、確かレキソタンだったか。ジェネリック製の、売ってもパチモン屋のようにとっ捕まることのない紛い物を酒で流し込んで、さして違いのわからぬ僕の脳は期待と共に酩酊…

飲酒日記

特筆に値するために生きているのに、特筆に値することがない。だから去年週一で更新していたこのブログも徐々に更新の間隔が空き、空いたことで無為なことへの慣れも薄くなり、無為に耐えきれなくなって全てを消してしまいたくなる。空腹と紫煙とアルコール…

日記

人が死に、呪っていない人から順に死んでいくことを思うと、一番呪っている自分自身が爺とも婆ともつかない老人になって独りで床の染みと化す姿が脳裏に映る。それも上手くいけばと言った感じで、日々をようやっとやり過ごしている。徐々に高くなるハードル…

糞をした日の日記

桜が完全に散り、排水口を流れるゴミも桜の花弁の割合が徐々に減る。外来種が流るる水に耐えるように逆らい、その実上るでも下るでもなくただ体をくねらせながら一定を保っている。これは日常の暗喩のようにも思え、なんでも暗喩と結びつける一種の狂気じみ…

物語の蠱惑性

戦争は長い間続き、昼食のサンドイッチを食べながらそれなりの社会との連帯感を求めてニュースを開くも、数分も待てずに違う窓を開いてしまう。戦争という名の(そして戦争という名のもとの)情報戦。それに対して、先の大戦を経験した我々はその情報を精査…

駄文すら書けない

久しぶりに文章を書こうと思うのは、何か素晴らしいことがあったのでも特筆に値する何かが見つかったからでもない。ただ日差しがそれなりに強くなっていることや桜が完全にその体を緑に変えていることはそれなりに文章になり得るだろうが、それを描写しても…

バスの中で桜が舞った話

精神科へ向かうのに徒歩三十分ほどかかることを思うと、今の優しい暑さにさえ耐えきれず(余談だが、僕は会う人々に「夏が嫌いそう」と言われるくらい目に見えて虚弱体質である。夏やそれを予期させる春、もしくはその名残の秋の暑さは好きでも嫌いでもない…

僕らが与え、受け取ることもできるのに決して手に入らないもの

猿もおだてりゃ木に登るとはあまりにも漫画日本昔ばなし的な言葉で使いたくはないが、褒められたり読者が増えたりすればそりゃ気も良くなり、文章を書いている。愛も憎も躁も鬱もガソリンにして走っていれば、そのうち全てを使い果たし、最終的には木や花が…

冬は雪かき、春の犬かき(言葉遊び以下)

四月になり、もう一週間も経ってから「四月になった」と声や指が反応するようでは新聞記者にはおろか、会社勤めなら全て不適合だろうが、その烙印を押されたという免罪符を盾に取る限りにおいて全ては許される。この文章はいささかディレイして放送される木…

精神科医に宛てた手紙

一ヶ月ほど前に精神科医に宛てた手紙を、こんな冗長な文章を書いたのに一人に見られて終わるのだと思うとさみしく、公開します。この文章に至るまでの経緯はhttps://freak-tanatra.hateblo.jp/entry/2022/02/15/184201 に詳しく載ってます。 先生と口に出し…

墓に唾をかけろ

煙草を買いに行くついでに書店に行く。置いてある本は変わりもしないくせに無駄に模様替えされた書店には、階段下のハンバーガー屋の臭いが流れ込んできて、ページに臭いが移るのではないかとの危惧で顔も浮かばない誰かに殺意が湧いた。買っては売ってを繰…

バスルームで手首を切る1の方法

リストカットをした。思ったより痛いと思ったより痛くないの反復で、たまに神経なのだろうか、じんじんする感覚があって、「やべ」と思って手首から剃刀を離した。 初めはカッターで切り始めたのだが、リストカットの熟練者である僕の手首はかさかさして上手…