反日常系

日常派

日記

二十六歳になった。自嘲的にカート・コバーンやジミ・ヘンドリックスを例に出すのもあまりに手垢がつきすぎてくだらなく思えて何も言えなくなった。二十六歳となると友人である森が俺と会った時の年齢で、あの時さっと奢ってくれた姿にはまだ近づけていない…

大人名詞と子供名詞

ユースカルチャーである反抗や感情や悩みや嫌悪……エトセトラ、エトセトラ。エトセトラの中に含まれる言葉はほぼ無限といっても過言ではない。無限を捨てて、およそ大人らしい分別を得ることが大人になるという言葉の非情なる実情である。脳に障害を持つ弟の…

日記

眠れる日と眠れない日が交互に来る。一日眠れない日があって、その疲れで翌日は眠れる。その次の日は疲労の蓄積がないので眠れない。以後繰り返し。そう言った興奮、鎮静の右往左往の中で、無駄な夜中ばかりを浪費している。テレビでもあったら流しっぱなし…

煙草を買いに行っただけの日

十月になった。誕生月ということを除けば特に思い入れはなく、年が明けてからもそれなりに時間が経ち、一ヶ月区切りにして「もう○月」と言うのにも慣れるため、十月になっても特に感慨もない。今年の十月をもう十月たらしめているのは煙草の値上がりだろう。…

途中で書くのやめた日記集

割れるように頭が痛いとはもう比喩とも思われない慣用句だが、割れるように頭が痛い。視界の端を蝿が飛んでいて、気になると思うと髪に止まり、バチバチ言う羽音が不快感を覚えさせる。前髪が目に入るせいか低気圧のせいか、頭痛の原因を考えるがそれを突き…

本当にただの日記

生活上のぼんやりとした不安から、真面目に実家に帰ろうかと計画している。まずは持ち物を整理することから始めた。本、CD、音楽機材を整理(整理というより流行りの言葉で言えば断捨離)し、簡易棚の粗大ゴミの収集の予約を入れた。物が少ないのはいい。い…

New Shitを水に流した

どうせ何にもならないと思いながら、何にもならない物事ばかりを選びとってしまう。何か心に残るワンシーンを探しながら映画を観るのに、二時間もじっとしていることが出来ず、片手間にゲームを周回しているとセリフを聞き流してしまい、十秒前に戻ることを…

老婆心と秋の空

病院への道を辿る。俺は発狂した老婆が絶叫しながら歩道を歩いているのを見ている。最初はなにか大声がしたと思って、イヤホンを外した。そして声の発生元のあらかたの方向を察知する。振り返ると自分が歩いている歩道と反対側の歩道にいる老婆と目が合う。…

継続のための継続

自殺まではいかずとも、消えてなくなりたい時がある。昔はそういった気持ちを自罰的行為に変えて気晴らしをしてきたのだが、もう身体はボロボロで、そういった行為も出来なくなってきた。リストカットをすれば親指の動きが鈍くなるし、オーバードーズをすれ…

日記に必要ない描写

薬屋で長い間待たされていた。スマホを覗く歪んで曲がった背筋を何回も伸ばし、肩を開き、目線を上げ、首を回す。目線を上げると視界に壁に取り付けられたテレビが写り、ぼんやりと見ていると速報の音が鳴る。その音につられてテレビを注視すると、アナウン…

夏の終わり

夏が終わる。夏の終わりの切なさや焦燥すら、それほど身を焦がすわけでもなくなってきた。いくつになっても夏の終わりに物哀しく思える人と、自分との差異は何処にあるのだろう。灰皿の底に熱を擦り付けることを何回も繰り返して日々が過ぎる。無益な日々に…

入院してました

ジャンキーと言えば横文字好きの中年層に対して一定の格好もつくが、実際はせせこましい中毒症状だ。依存とそれを満たす一瞬の解放を繰り返した結果、身体は必要以上に(そもそもそんな必要はないのだが)弱くなりすぎたらしく、数日の尿閉塞と精神薄弱によ…

日記

一進一退と言えばまだ少しは響きがマシだが、実際はちょっと違う。ずっとウロウロ同じところを周回している気分だ。髪を短くして、女性ホルモンを打つのをやめたのが一年前。そうすれば自分の中の男性性を許せるのではないかと思っていた。二十六にもなるの…

日記

夜になれば死にたくなるし、朝が来ても思考の同じ曲がり角を曲がればすぐに死にたくなる。やや衝動的にならないようにはなってきたが、それは自省してルーレットに賭けないようになることではなく、金がなくてルーレットに賭けれないという事だ。気力がなく…

日記

金がなけりゃ死にたくなるのに、金があれば使ってしまうし、金がなくても使ってしまう。悪癖。そういうことを繰り返していると、金を使う使わないが存在しない場所に行きたくなる。例えば精神病院の鍵のかかった病棟だとか、原始共産主義の国だとか。格好の…

【小説】犬吠埼泥棒日記

自殺の名所が散歩コースの一つだ。無職なんて散歩くらいしかやることがない。今まで、四回ほど自殺者が自殺者志願者である頃に会ったことがある。彼らは皆一様に、僕を胡散臭そうに思ってそうな顔を向け、「宗教勧誘か? それとも自殺防止のボランティアか?…

日記

睡眠薬を二倍に増やしてもらったが、眠るのに必死でオーバードーズのために貯めておくことが出来ない。ギターは個人的な要望を事細かに工房につけているからなかなか手元にこない。メルカリで新しいハムバッカーを購入し、手元に着次第工房に発送する手筈に…

医者に宛てた手紙

下記は通院の際に医者に渡すことを目的とした文章で、その目的を果たしたのでもう用はなくなった文章だ(目的というものはその物の用途を指定するのと同時に用済みになるまでの期限を設定する)。スパイ映画さながらバーン・アフター・リーディングでもいい…

日記

代わり映えのしない、間違い探しみたいな暮らしをしている。誰かの暇に取り付く暇つぶしの対象にもなりえないから、間違い探し以下かもしれない。見慣れた道の端に生えた雑草みたいな、何かが違って全く同じである訳がないことは確かなのにそれは全然本題に…

全員が全員死を予期しているのだが

「死にたい」と言う女は「死にたい」と言う男ほどではないが嫌いだ。でもいちばん嫌いなのは本人の意思ではないところに生死があるのに「生きたい」と言う人間だ。人々にはハレとケがあって、誰しもケの臭いを番犬のように嗅ぎつける。言葉にも臭いは宿る。…

生きずに在りたい

ラッパーが生存以上生活未満というパンチラインを吐き、それがマイク、パソコン、オーディオデータ、時間、そして俺のiPhoneを経由して耳に入る。そしてそれを脳内で文字情報に変換してiPhoneをフリックした。生存以上生活未満。全くもってその通りだ。上が…

女医の親切なサディズム

精神科に行く。もはや日常の一つになった被分析作業は、靴を脱ぎながら話す女医の脚を眺めすぎず、なるべく気取ってると思われない言葉を探すという地雷原を慎重に歩くような用心深さで行われる。「行われる」というより「行われ<ら>れる」とでも言うような…

医学書の中に踊るリストカットという文字

メンヘラという言葉に手垢がつき、更には一般に広まるようポップ化され、本来の意味からはかけ離れた意味で使われるようになってから随分と経った。ポップ化というのは簡易化と陳腐化を悪意なく表現する為の言葉だ。今ではリストカットも症状の一つとなり、…

日記

薬ばっかり飲んでたら、次の通院までの二週間が体感四日くらいになった。通院だけが時間の指標になり、通院の度に「二(もしくは三)週間経ったのか」と感じ、その度に一日一日がちゃんと過ぎていると思う。ループしているかのような気持ちで日々を過ごして…

全部飲んで三時間だけいい気になる処方箋

遊ぶことも喋ることもなく、平凡な日常を送っている。気の迷いで購入した薬もまだ届かず、荷物は台湾の辺りでうろちょろしているようだ。薬を沢山飲むことは行為としては自傷に入るのだろうが、慣れると自分の健康を害しているとわざわざ認識することもなく…

育ちが悪い。血が悪い

許せなかったことを許さない若さも、何が許せなかったのかを覚える記憶力もなくなって、大体のことは許せるようになってきた。大人になるにつれて、若い頃に大人に要していた理性やそれに伴う行動の理由が、大人になるからといって獲得出来る訳ではないこと…

無題

今日はいつもと違う煙草を吸いたいと思い、コンビニへと買いに行く瞬間。今日はカレーを食べたいと思い、カレーを作る瞬間。そういった一時の気まぐれがなければ紛れなかった気を、ふと思い出して落ち込んでくる。気まぐれはどこから来るのだろうか。心なの…

無題

死のうとは思ってないが、死にたいと思うことは自分の中の様々な矛盾を整合性あるものへと変えてくれる魔法のような物なので、ただぼんやりと死にたいと考えている。まともになりたいくせにまともになるのが怖くて仕方ない。このままじゃダメだとわかってい…

暇なので自殺配信ばかり見ている。死を決意した人間が想定した以上に明るい口調で話すのはもう誰もその気持ちを変えられないからなのだろうか。人に影響されない心境はからっ風の吹き荒ぶ砂漠を思い起こさせる。それでも人との繋がりを求めて配信してしまう…

どうしようもない

やりたいこともなりたいものもない。ふと思い浮かぶのは髪の長かった自分だが、それが回顧なのか自己嫌悪なのかよくわからない。何にせよこれは鬱の症状だと思う。こうしている間にも自分が取り返しのつかない成長をしていることが本当に嫌だ。聴きたい音楽…