保育所

言葉なんて子を捨てる親と保育所のやりとり

今日の半径

 今日もまた日記を書く。半径をぐるぐる書いているうちに、日々からはみ出た滲みを許せるようになれればいい。一種の作為としてちょろちょろ同じところを回る点Pとして、一人称をPにしようと思ったが、友人のあだ名がPちゃんなのでやめた。

 

 朝起きると非常に肩が痛む。昨日は二十時に寝たので、断片をかき集めたみたいに睡眠時間だけが増えそのじつ実を結んだものはない。うつ病の記録アプリ(うつレコ)に起きた時間を記入すると、寝た時間が十二時間弱と言う。まさか(時計を見る)、さもありなん。体全体の重さのせいで起き上がるのに三回失敗した後、寝床のロフトからやわなはしごを降りる。はしごにかけておいたギターがたわんだ拍子に倒れ、ぼわーんと音を出す。流石に下の住民に申し訳ない気がしたが、もう八時だし許してほしい。

 昨日作った鯖の炊き込みご飯を温めて食べる。電子レンジが嫌な臭いになったし、ツイッターでレシピを見てうまそうだと思って作ったのに、そうでもないので悲しい。そもそもツイッターのレシピがうまかったことない。百四十字に縮めて、さらに大袈裟にものを書くからこうなる。キャッチコピーみたいなものだろうか。簡単で六十点ぐらいですと書かれたら作らなかったのにと思う。それから、なんとなくギターを弾きいていたが、自分がいかんともしがたいくらい音痴なのを思い出しやめる。ギターも持ち主に似たのか音痴だ(アコギの方である。友人からもらったレスポールは専ら鏡の前で格好付けるときに使用している)。

 そういえば、昨日、女装被写体の募集に声をかけたんだった。思い出してアマゾンでウィッグを購入。おれはガチ勢だぜというところを見せつけたい。キモがられそうだな。まあ、こういう空回りするときも大事だと、今さら後悔し始めているのを気付かないふりをする。予定をいれる度に、あー、その日まで死ねないじゃんと思う。そこまで毎日死について考えているわけではないけれど、事実として自分が死んだら迷惑する人間がいてそいつに「あの田中って野郎、急に連絡無視しやがって」と思われたくない。それに断ることができない人間なので、予定が近づくにつれてメンタルがやられてしまい。断りかたがわからず、よしリストカットだ、やらオーバードーズだになるので体に悪い。

 またいい加減寝転がっていると、知人に送ったラインの返信が来ていて、不妊だと言うことがわかったと言う。急な話に、レズビアン不妊もなにも・・・・・・とは思うが、どのテンションで返せばいいのかわからず、「ぼくも不妊だからさ」と返す。返した後に自分が不妊だということを思い出す。このまま女性ホルモンをやめていても打っていても、なにも変わらないのかと思うと髭の生えない方がいいかと思う。久しぶりに女性ホルモンを飲む。不妊について考える。不妊について真面目に考えたこともないし、ぼくの場合は完全に自分のせいと言うか選択的去勢みたいのものなのだけれど、不妊と言うのは不具だから、どうしようもない。選択して「しない」を選ぶのと、「できない」は違う。もう書き尽くされてるか、こんなこと。ウエルベックがヴァギナ的悲しさとぺニス的悲しさについて語っていたのを思い出す。穴の悲しみはどうしようもない。その通り。

 チャットアプリ(言い方を変えれば出会い系)で今日は暖かいと言われたので、いそいそと着替え、外に出る。ヒートテックと革ジャンが暖めてくれたが、暑いくらいだ。ブックオフに行く。ねこぢるにハマってしまったので、他の作品は置いてないかを確認。置いていない。そのあと行くところがなくて、ややパニックになってしまったので近くの書店へ逃げ込む。なに買うかと悩んでいると、軽薄な「これ買おうよ」と「もったいない」が喧嘩し始めたのでいそいそと違う書店まで歩く。書店は閉鎖病棟に近いので、パジャマ姿を見ると怖くなり、またまた退散。近くのタリーズに逃げ込む。地方都市なので(今、痴呆と死と変換された)、ハゼに眼鏡かけたような高校生が多いのだが、高校生がいなくて落ち着いた。おしゃれな人も髪の毛がはたきみたいになっている老人もいた。すこし気を取り戻して家に帰る。家に帰ろうと思っていたのだが、そうだと思い、近くの老夫婦と老夫婦には強いその息子らしき中年が経営している古書店に行く。ねこぢるうどん(ねこぢる)とインドぢる(ねこぢるy)があった。買いたい。

 近くの銀行でお金を引き落とす。なにか銀行員が言っているので、イヤホンを外すと、クレジットカードの案内だった。学生ですか?と聞かれたことと、久しぶりに人間と話したことが嬉しかったが、それに気付いたのは「はは、考えておきます」と言って銀行の外に出たあとだった。書店に戻る。先述の二冊と絶対安全剃刀(高野文子)と変身のニュース(宮崎夏次系)を買う。二千八百円。

「あ、学生ですか?」

「あっ・・・・・・もう・・・・・・やめましたね。ははは」

「そうですか」

 ぎり二十二歳なので割引けという思いに気づかず、老人は学割を適用せずにポイントカードの仕組みについて話し始めた。金物店みたいな顔のおじいちゃん・・・・・・。まあいいや。

 おれはサブカルだぞ。という思いが強くなり、またメタな視線で「昼間から酒を飲むのはロックでは?」と思えてきて近所の安いスーパーへ。酒の前に立ち止まりなにがいいのかと悩んでいると、体質的に酒が合わないのを思い出してさらに悩む。メタと体質という自分自身が戦っていると、それをさらに見ている自分自身が、自分達が戦っているという事実に悲観しはじめてまたまた退散。スーパーの自動ドアがわかりづらいので、センサーがついていないほうでまごついてから外に出る。いつもの儀式。それを見ていた雰囲気イケメンと目が合う(雰囲気イケメンとは悪い意味ではない。顔は百点とはいかないまでも、雰囲気がいい。下手うまが一番かっこいい)。イケメンは路肩の花壇(高さ二十センチメートルくらい)に腰を下ろし、安い発泡酒を飲みながら、片手にはタバコを携えて、地べたにおいた空き缶に吸い殻を落としていた。なにしてんのという感じで、感情なくぼくは見つめられていた。もう恋が始まってしまいそうだった。イケメンは斉藤和義森山未來を八二で調合した感じだった。よくも狭い歩道で腰下ろしてるなという気持ちと、酒なんでもいいからおごったら仲良くなれるのでは、と思うが、なに話していいかわからないのでやめた。「どうせ」思考をやめたい。「もしや」思考にしたい。もしや仲良くなれるかも、など。

 家に帰って漫画を読んでいると、髭のボーカルが「若い頃はニルヴァーナを聴きながら太宰治を読むみたいな最低なことをしていた」と語っていたのを思い出した。でもいいんじゃないの。そういうケーキからイチゴほじくって楽しむみたいなことも。

 じゃ、まだイケメンいないか覗いてくるね。