反日常系

日常派

本名変えました

 本名を変えた。本名を変えようとは二年前から動いていて、そろそろ裁判所に行って認められるだろという頃合いだったので裁判所に行ってきた。電車を乗り継いで、自動生成みたいな都会に降り立つ。家庭裁判所に入ろうとすると荷物検査され、そういうこともあるのかと荷物をすべて渡して金属探知機を潜り抜ける。建物の高層階まで、上がっているのかわからないエレベーターで上がり、待合室の勝手がわからずきょろきょろしていると、書記官に呼ばれる。十五分くらい話をする。少しでも性同一性障害に見せようと(実際、性同一性障害なのだが、心の問題というのは他人からすればいかにステレオタイプであるかで決まる)、無様な高音を出して話した。それから使用実績の書類を提出する。書記官は一枚一枚めくっていき、ぼくが整理に飽きたページにあたると「急に見にくくなったね」と言った。ぼくは特に言うこともなく、「でしょう?」と言った。それから一時間ほど待ち、改名の許可証を貰った。区役所にいかねば。

 また電車に乗る。近くの区民事務所では駄目なので、わざわざ最寄りの数駅となりの駅で降りる。長く待つだろうと思ってインドカレーを食べる。その後、区役所に行き、住民票の名前を変える。戸籍は本籍の戸籍謄本が必要だという。戸籍謄本を取り寄せるめんどくささを考えると再びげんなりした。なんであの紙っぺらが四百五十円もするんだ。コロコロコミックはあの分厚さで五百円なんだぞ。それに取り寄せがめちゃくちゃだるいのも何とかしてくれ。なんで応募者全員サービスみたいな仕組みなんだ。なんにしろ住民票の名前を変える。住民票を貰って、マイナンバーカードの氏名も変える。

 帰宅すると、外ではずっとスマホを見ているからか、イヤホンをつけているからか、頭がガンガンに痛む。薬を飲んで所用をこなす。戸籍謄本の取り寄せの紙を書いていると、本人の欄の名前をどう書けばいいのかわからなくなった。とりあえず、記載が必要な人物の欄には改名前の名前を書き、請求者の欄には現在の名前を書いた。そして請求者との関係の「本人」に丸をして一人で笑った。明日は定額小為替を買って、戸籍謄本を取り寄せて、障害者手帳などの改名手続きを進めたい。

 新しい名前を書くたびに嬉しく思う。前の名前は煙に巻きすぎたため、今ではぼくの事を下の名前で呼ぶ人はいないが、今の名前に慣れた頃には下の名前で呼ばれているだろうか。