反日常系

日常派

入院している

 入院している。それについての些事を事細かに説明のような文章で描写するのはやめておこうと思う。そもそも、何を書くべきかさえ検討がつかないのだ。病名がまさかの解離性障害だったこととか、入院のための検査はあまりにもめんどうなのでそれは見たことのない儀式のように思えたこととか、入院患者と話すことができたこととか。すべて語る意味はあるのだろうと思うけれど、語る労力、そして語った後に残る意味を考えるとどうも萎えてしまうのだった。つまるところ、ぼくは調子が悪いという結論に達した。ぼくの書くものは常に日常とその半径、つまりは視野と同義だから、見る物が変わればまた新しくものが書ける。はずなのだ。うまくものを書くことが出来ないというより、うまくものを書こうと思うことが出来ない。なんだか疲労感でいっぱいで、何をするにも億劫だ。入院の日、通勤ラッシュの時間に外に出たからだろうか。二十一時消灯の病院のリズムに慣れていないからだろうか。なににしろ、喉に血反吐がこびりついて不快感をもたらすような気分だ。人々は素晴らしい。ぼくだけの気分が上手に上を向かない。こんなに恵まれているのに上を向けないことに罪悪感に苛まれる。優しい人達の目がみんなしてぼくが上を向くのを待っている気がして焦ってしまう。当分は何も考えたくない。