反日常系

日常派

日記

 梅雨が火照りかけた列島の顔に冷や水をぶっかけて、季節が巻き戻ってきた気がする六月。白いTシャツにミートソースをこぼしてしまった。

 友人と下らない会話を交わしながら、友人になれなかった人びとを思い出す。いろんなことを思い出しても、語るには長すぎるように思えて、さしたる言葉は続かずに落ちる。人々の勝手がわからない。人々はぼくが気にするところを全然気にしていないように思える。それか、ぼくは人の気にしないことばかりを気にしているように思える。人に好かれることに怯えて疲れた。

 部屋干しした衣類が日差しを遮る。暗い部屋の中、陽が傾くのを見ていた。小学校からの友達とは本の話ばかりしている。そのため、本を読まなければいけないと思い、数ページ開いてやはり飽きてしまう。マルグリット・デュラスの顔を見て、もう会わない大学時代の友人に似ていると思う。いつ、ぼくの顔は破壊されるように老いるだろうか。二十歳が人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない(ポール・ニザン)と啖呵を切れるようにぼくは老いないだろうと思った。恐らくは破壊され尽くした後に、昔を懐かしむように老いたことを認めるだろう。いつ老いるだろうか。ぼくの顔の化けの皮を剥ぐ時がいつかやって来て、人に好かれることに怯えなくなるだろうか。人に好かれることの受容が人に好かれ難くなることと同時にやってくるなら、人生は取り返しのつかないことの連続だ。しかし、その人生観が正しいことを薄々悟っている。悟るくらいには取り返しがつかなくなっている。覆水を嘆くうちにぼくの顔には嘆きの皺が刻まれるだろう。