反日常系

日常派

飲酒日記

 特筆に値するために生きているのに、特筆に値することがない。だから去年週一で更新していたこのブログも徐々に更新の間隔が空き、空いたことで無為なことへの慣れも薄くなり、無為に耐えきれなくなって全てを消してしまいたくなる。空腹と紫煙とアルコールに塗れて日々を消化しては、大便にもならず黄色い小便をトイレに吐き出して、酩酊していると自分に嘘をつき、ようやくと言った調子で日めくりカレンダーを捲る。

 アルコールが脳内を鬱屈させるのに飲酒を続ける理由を、僕はまだ見つけることができない。酔わないくせに簡単に落ち込んでしまうし、煙草を喫めば吐瀉物が下腹部から胸の辺りに湧き上がってしまう。そんな気分の中、生きていきたくないと涙を流すために横になると、涙はいくら顔を顰めても出ないのに、三十ミリリットルくらいの胃液は簡単に喉を逆流して喉ちんこを洗う。誰かによって助かりたいし、誰かを助けたい。けれど、人は各々そう思いながら、自分の胸三寸に空いた穴に宛てがうには誰かしら個人は小さいと値踏みしながら生きているのだろう。

 鬱屈して、誰も見ていない配信を立ち上げ、酒が回るのを良いことに思ってもないくせに「全員死んでしまえ」と宣う。善良で、それ故に何かしら興味を惹くものではない自分の精一杯の愛嬌だが、本音ではない故に空空漠漠として響き、「しまった!」と思う。誰も見ていないことを慰めにする。僕が相手の気持ちも考えずに愛する人々は、全員無限に生き続けてほしい。そして自分は誰かのそうした思いの対象にはなっていないだろう。死にたくなって「死にたい」とでも呟いたらそれも空空漠漠としていて、そら恐ろしくなって消した。

 酒を飲んでいるせいか、自分勝手に感傷的になって良くない。けれど酒を飲んでいないと、酩酊しているという免罪符がないと、言葉は喉に詰まる。そんな言葉を酒を飲んで横になって胃液と一緒に口内まで運んでやらないと、僕は何も言うことができない。僕は何も言うことができない。更には確かなことでも言おうとするともう口は真一文字になってしまう。今現在虚ろっている言葉を吐く。いつか忘れてしまうことを書く。

 精神科医とは仲良くなれそうにもない。漢方は副作用もないのに都合良く僕の体には作用しないだろう。「忙しそうですね」と僕の口からついて出た遠回しな批難に、若い精神科医はパソコンをカタカタやって不服の目を隠した。「縫合糸」と言った言葉が「違法行為?」と聞き返された。「死んでしまえ」と医者に対して思うが、愛してもない相手だからすぐに忘れた。頭を下げて診察室から出る。病人が受付の女を口説いている。喉が大きいのか羞恥心がないのか、話し方からわかるような病人は声が大きい。僕は消え入るような声で処方箋を貰う。酩酊に適うような薬は処方されない。