反日常系

日常派

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ほとんどのはしがき

退院したが、退院も入院もなにも違いあるめえと思って更新をしなかった。周りは「退院したら知らせてくれ」と言っていたので、知らせると、うち二人が「お勤めご苦労様です」と言ってきたので、苦笑にも似た微笑で画面を見つめた。まあ、身体を悪くしたわけ…

日記

十六時に病棟の鍵がかかる。まあ、いつもかかってて、許可制で外に出るのだけれど、その許可も取れなくなる。いつも、この鍵がかかると安心する。今日は余計な飲食や飲酒をしなかった。今日は過量服薬しなかった。いろんなことが禁止されることで一日が確定…

網目から転げ落ちて

退院の目処が立ったので、通院先に電話をした。予約を取るためだった。 「たなかさん、どうなされました?」 「いや、退院の目処が立ったので通院の予約をしようと思ったんですけど」 「たなかさん今医療保護入院してるじゃないですかぁ……」 話を聞いていく…

髪を切りました

インコのような顔で外を見る度に看護師が「タバコ外出ですか?」と聞いてくる。俺は煙草を喫まないと何度も言っているのに。おそらく、ヤニ切れの呆けた顔に俺の顔は似ているのだろうと思う。 俺、という一人称に背伸びした少年の気持ちになる。俺という一人…

二つの掌編

エレヴェーターミュージック・フェスティバル 青年がマイクロフォンの調子を、教えられた奇妙な手筈で確かめている。彼はエレヴェーターミュージック・フェスティバルの運営スタッフであった。 その催しは彼の住んでいる町が一年に一度、張り切って行う祭り…

季節に敏感であったりなかったり

夕方のチャイムが一時間早まったことを、病室の二割も開かない窓越しに知った。精神をおかしくしていると様々なことに気付かなくなる。最低なのは精神をおかしくしていることすら気が付かないことだ。ぼくは親に「もうおかしくならないよ。大丈夫」と言う度…

生きかけたくもなかった

リストカットをした。血がぴゅーと噴き出すまでいったのに、死ぬのが怖くて生き延びてしまった。生きるのだって死ぬほど怖い。死ぬことは生きることと同じくらい怖い。結局はどちらにしたって怖い。金がないこと、自分に金を稼ぐ能力がないこと、人の補助が…