反日常系

日常派

日記

 田舎に帰っている。田舎に帰っていると車で一時間かかる場所にあるイオンモールくらいしか娯楽がない。俺は午前中に宅配便を受け取る予定があった(親にその瞬間を見られると「何を買ったの?」と詰問七割好奇心三割で聞かれるので午前中が最良だ)。昨日はそのくせに眠れなかったので睡眠薬を普段の十倍以上を飲んだ。こういう些細なことのために重大なことをしでかす、本末転倒な性分が俺にはある。それから親の車に乗ってイオンモールに行く。睡眠薬のせいで普段かかないいびきをガァガァかいて、一時間では飽き足らず、ブックオフ横のベンチでSHIBUYAMELTDOWNみたいにくたばって眠った。その時にくたばってしまえばもっとよかった。治安がいいことに生かされている。

 それから暇つぶしにガムテープとリップクリーム、「女の子の声になろう!」という中古二百二十円の本を買った。声が可愛くないことはそれなりのコンプレックスだ。「ありのままで」とか言ってくる、諦め慣れた自尊心でも、「声が可愛かったらいいなあ」と思うことは数多くある。でもこの本を読了しても声が可愛くなることはないんだろうなあと思う。

 出会い系からラインに移動した男性に、「働く気はないの?」と言われたので、罪悪感から「あります」と返したら、話がトントン拍子で梱包作業の仕事があるからそこを紹介してもらうことになってしまった。まあいいけど、困ったら上司を殴るか自分が死ぬかすればいいだけだし。

 けれども、なんにでも出来る(そしてなににもなれない)時間が無くなることが怖い。何も出来ないまま社会にほっぽり出されるとは思ってはいなかった。なにかしらのエキスパートになってしたり顔の大人になるものだと思ってた。周りはみんなそうなっているのだけれど。

 東京の生活を畳んで、田舎に帰ろうか考えていた。その理由はだいたい百個くらいあって、一つ目は親元にいれば少しは死にたくならないかもしれないこと、二つ目は田舎の職場は緩そうなこと、三つ目は車の免許取ってもいいかななんて思っていること。田舎に帰ればゆっくりバイトでもして過ごそうかと考えていた。でもそうするなら東京で働いた方がまだマシだし、そうした方がいいなと思った。四月が実家に帰るタイムリミットなので、それまでに仕事を見つけて自立したい。自由にできるお金を増やしたい。

 まさか、自分が歳をとるなんて。歳をとったことで自分が変わるなんて。まだキメセクも女の首を絞めることもしていないのに。余白が仕事で埋まっていくのを考えるとさっさと死にたくなる。