反日常系

日常派

日記

 睡眠薬を二倍に増やしてもらったが、眠るのに必死でオーバードーズのために貯めておくことが出来ない。ギターは個人的な要望を事細かに工房につけているからなかなか手元にこない。メルカリで新しいハムバッカーを購入し、手元に着次第工房に発送する手筈になっているのだが、出品者は全く返事がなく、暗雲がけたたましいドラムソロみたいなゲリラ豪雨を暗喩させて脅迫している。手元にギターがないと、元からすることもないのにさらにすることが消されていく。手帳に白を重ね塗りされている気分。

 酒を飲んで、部屋でのたどたどしい踊りに軽さを与えても、その軽さは何もなくどこにも行けない軽薄だ。二十四時間の長さが掠れる事なく描き続けられる。早く時間が過ぎて欲しい。脳内に現れて実現を伴わない発想に、それはてんで見当違いだと言って欲しい。脳内の幻影に着手して、それは脳内にしか現れない、夢精でしか交われない女と同じだと言われたい。

 ギターがないので本なり映画なりを貪り食っている。それが木下理樹だとかジム・モリソンだとかみたく歌詞に直結したらいいと、直結することはないだろうという直感と共に脳内に書き写されている。バタイユだとかジム・ジャームッシュだとかを要約して頭に入れる度に、一字一句を漏らさないような理解は出来ない自分の頭に嫌気がさす。

 販売のための市場に沿った狂気を得ることが出来たら。存在意義になれるような誤読なり誤訳を身につけることが出来たなら。そういうことを夢見て人のインタビューを読むが、何も得るものはない。何者にもなれない。失錯行為は無意識の反映であるとはフロイト。何も書き間違える事がない俺は何の無意識もない。方向性を持った願望すらない。どこにも行きたくないのだろう。死への誘惑は生殖から離れた性的興奮(エロス)を引き起こすという(バタイユ)。死へと絶えず誘惑されながら、興奮さえおぼつかず、ただ憂鬱を引き起こされている。時間を潰したい。オーバードーズはもう飽き飽きだ。新しい死への児戯が俺に官能を与えてくれることを願っている。その誘惑が引き起こす幻影に時を忘れて拘泥したい。