反日常系

日常派

お題小説

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暇だし文章を書きたいのだけど書くこともないのでお題メーカーを引いて何かしら1000字くらい小説を書こうと思います。前置き終わり

 

たなかへお題は『とっくに終わりを迎えていた/この慟哭は届いていますか/君の夢を視ない』です

 

 

 浅い眠りは薄皮を剥かれて行くような感覚で、そのくせ時間としてはしっかりと眠れた。左手に君の頭分の重さはない。遠距離という訳ではないが、往復二千円は俺の財布には痛手だ。毎回ヘラヘラしながら交通費を貰っているけれど、ヘラヘラしたからと言って心の痛みがどうにかなる訳でもない。たまに会えないことを悲しく思うことがある。例えば個人輸入で手に入れた黒とオレンジの睡眠薬を飲みすぎた時。君を求めているのにそこにいないないことと、吐き気がするのに胃の中には何も入ってないことを重ねてぼんやりしている。腹に固形が何も入ってないまま何日か経った。煙草とコーラと精神安定剤だけで生き延びている。仕事もしてない身分にはそれで十分だと思う。それがふさわしいと思う。

 夢を見た。君は赤いマフラーをして、楽しそうに俺の知らない男と歩いている。それを理由にして彼女に連絡しようとは思わない。そんな気持ち悪いことはしない。しても、彼女は悲しそうな顔をして、「大丈夫だからね」と言うだけだろう。ただ、俺は夢の通りになるべきなのだと思っておうおう泣いた。俺が君を幸せにすることはできないのだという事実が悲しかった。このままずるずるとし続けてはいけない。この慟哭が伝わる前に。クローゼットから買ったまま放っておいたロープを解く。両手でパッパッと引っ張って強さを確かめた。この強度なら、インド象でも殺せるだろう。ロフトの手すりに縄を強く縛り付ける。もう二度と君の夢は見ないだろう。夢は寝起き直前に見るものだ。もう二度と起きない。地面に涙で絵を描けそうだけれど、足元は床に辿り着かない。さらば、と思って足元の台を蹴飛ばした。

 

 君が私の夢を見る夢を見た。おそらく今頃泣いているだろう。私にはこの夢は正夢だろうという確信がある。正夢を見た時の、世界全体のつるつるとして柔らかい感触でわかるのだ。君はいくじなしで泣き虫だから好きなのに、君はいくじなしで泣き虫だから泣いてしまう。「そんなに心配しなくて大丈夫だよ」といつも言ってあげる。そして君はしゃくり泣きをすすり泣きに変え、落ち着いていくのだ。いつも、世界は思ったより寛容だよって言ってるのに、君は全然信じてくれない。君は嫌がるだろうけれど、君がそのままでいられるよう、今は「結婚でもしようよ」って言いに行く途中だ。